ブレスレットフックの秘密

こんにちは、セールス兼オンラインストア担当の荒瀬です。

humでは直営店での受注生産を主としながら、取引先様でもイベントを開催することがあります。
毎年恒例のところもあれば数年に一度のところもあるため、可能な限りショップにお伺いして、ブランドや商品について直接スタッフの皆様にお話する”説明会”の時間をいただいています。

説明会では商品のコンセプトのほか、取り扱い時の注意事項やサイズの選び方など、接客の際の実践的な内容もお伝えするのですが、その際によくいただくご質問が「ブレスレットの開け方が分かりません・・・」というもの。

実はhumの店頭でも、初めてブレスレットを手に取る方が戸惑うシーンはよく見受けられます。

「ブレスレットのフックの開け方が分からない」

一見すると「扱いづらいのでないか」とマイナスな印象を与えるかもしれませんが、説明するたびに、humだからこそいただくご質問だということを実感しています。

ちなみに「フックの開け方がわからない」原因はふたつあります。
1. デザイン:フックとその他のパーツの見分けが付きづらい
2. 機構  :つくりが複雑

「原因」と言ったものの、それはデザイン性と実用性の高さにこだわった結果であり、さらにパーツによって素材を使い分けることで、商品化の大前提である日々の着用に耐え得る強度を叶えています。

そこで今回は、「デザイン」「機構」「素材」以上3つのポイントから、humのブレスレットフックの秘密を紐解いていきたいと思います。

 

1. デザイン

humでは、humete collectionやRefine Metal COLLECTIONなど、チェーンタイプのブレスレットを数多く展開しています。
チェーンは機能と美しさを兼ね備えたプロダクトであり、切れ目なく続く姿から、永遠を連想させるモチーフでもあります。

「humete」は「hum」の考えるeternity」を形にしたコレクションです。ブレスレットの中に唐突にフックが存在するようでは「eternity」が成立しません。
そのため、チェーン本体と同じキヘイチェーンのコマをベースにしたフックを開発され、着用した際にフックが流れを遮らないデザインが完成したのです

THE SYMBOL OF REFINED METAL」のブレスレットではチェーン本体からフックにかけて微妙にグラデーションをつけることで、流れるように自然にフックが存在しています。

 

2. 機構

Deco Lace Collectionのブレスレットなど、一部の商品では二重ロックのフックが採用されています。
どこに爪を掛ける突起があるのか、どの方向に開くのか、一目では分からないのではないでしょうか。

humでは、デザイナーとアトリエが試作と意見交換を繰り返しながら商品化までたどり着きます。しかし、それでも長期間お使いいただくうちに「もっとこうしたい・こうしてほしい」とか「気付かないうちに外れていてヒヤっとした」などのご意見を頂戴することがあります。
このブレスレットも、発売からしばらくしてフックについてご相談いただくことが増えてきました。

せっかくお客様にお買い上げいただいたのだから長く愛用してもらいたい。自分たちが作ったものに最後まで責任を持ちたい。そんな純粋な想いから、改良への検討が始まります。

流れを遮らないデザイン性を可能な限り保ちつつ強度を高められるよう、試作が繰り返され、現在の形になったのがDeco Lace Collectionのブレスレットの二重ロックのフックです。

 

3. 素材

humのジュエリーには、主にK18ゴールド(グリーン・イエロー・ホワイト)、シルバー925、プラチナ950が使用されていて、パーツごとに最適な素材を使い分けています。

いくつか例を挙げてみます。

・Humete Chain Blaceleにひとつだけ配置されているゴールドのコマはK18グリーンゴールドですが、フックはよく見ると色味が異なります。
強度の観点から、フックにはK18グリーンゴールドよりも硬いK18イエローゴールドが採用されています。

Humete Chain Blaceletをはじめとするフックの稼働部分の軸にはプラチナ合金が使用されています。
粘性の高いプラチナの特性を活かして、繰り返しの着脱による軸のねじ切れのリスクを減らす目的があります。

・Humete Chunky Chain Braceletはコマにボリュームがあるためフックまでシルバーで制作されいますが、接触部分にK18イエローゴルドを張ることで強度を高めています。(K18と比べるとシルバーは柔らかい金属のため、他の商品ではフックのみゴールドで作られているものがほとんどです)

写真でアップにしてみると素材(色)の違いがわかりますが、説明がなければきっと知ることのない部分だと思います。

デザインには影響しない部分ではあるものの、細部を知っていただくことで、これから先オーダーする方、実店舗で商品に触れることが難しい方、そして既にご愛用いただいている方、皆さまの安心に繋がれば嬉しいです。

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humのジュエリーにはコンセプトやデザインだけでも語る部分が多くありますが、随所に作り手のこだわりが散りばめられています。
デザイン性と実用性、どちらも妥協せずに高いレベルで両立させているからこそ、お客様が他とは違う魅力を感じ取って、数多くのブランドの中からhumを選んでくださっているのだと推測します。

以前、hum JINGUMAE workshopの小野が「humには“感性品質”と“物理的品質”がある」という話をしていました。
例えば燻し仕上げのように目で見て感じ取る品質が前者、今回お話してきたようなフックの動作や強度、触り心地など、実際に手に取った時に感じる品質が後者です。

しかしこの物理的品質も、感性あってこそ成り立つものなのではないでしょうか。
デザインソースやコンセプト、日常的に長く心地よくお使いいただける質感、品質など、すべての要素を理解し、ジュエリー制作に反映させる感性です。
humの職人たちが一点一点のジュエリーに向き合って制作に取り組んでいるからこそ、私たち販売を担当するスタッフも、大きなこだわりから小さなこだわりまで、これからもっと皆様にお伝えしていきたいと考えています。

 (ちなみに、「感性品質」についてもいつかJournalで紐解いてみたいなと思っています。)

 最後までお読みいただきありがとうございました。